脳室内投与の実際

ヒュンタラーゼ脳室内投与

リザーバを介したヒュンタラーゼ脳室内投与は通常、脳外科医ではなく小児科医が行う。日常臨床において、CVポートによる薬剤投与の経験のある小児科医にとって、同様の手技で行うことのできるヒュンタラーゼ脳室内投与は、容易に対応できるからである。

脳室内投与の準備と手順

患児の来院時にはバイタルサインをチェックし、問題がなければヒュンタラーゼの調製を薬剤部に依頼する。
リザーバの穿刺には、27G翼状針を用いる。滅菌シリンジ(髄液採取用、薬剤投与用)、滅菌ガーゼ、テガダーム等の透明粘着フィルム、滅菌ハサミ、ポビドンヨード等を滅菌シート上に準備する(図1)。投与は通常は覚醒下で行うが、落ち着かない場合は鎮静下で行うこともある。

図1

準備するもの

  • 27G翼状針
  • 滅菌シリンジ
  • 滅菌ガーゼ
  • テガダーム等の透明粘着フィルム
  • 滅菌手袋
  • 滅菌ハサミ
  • ポビドンヨード 等

投与手順

ヒュンタラーゼの投与は、保護者と看護師のサポートのもとに、外来のベッドで小児科医が行う。来院時に患児の体調をチェックし、問題がなければヒュンタラーゼ投与の準備をする。来院から投与の準備及び投薬までを、30分から長くても60分程度で終了して帰宅できるような体制で、治療を行っている。

  1. リザーバの位置を触診で確認し、剃毛して周囲をアルコール綿で清拭する。
  2. 髪の毛が清潔野に付着しないようにテープで固定し、一般的なCVポートへの穿刺と同じ要領で穿刺部位をポビドンヨード液で3回消毒する。
  3. ヒュンタラーゼをシリンジに充填する。
  4. 滅菌ガーゼを4つ折りにし、角をカットする。中央に空いた穴にテガダームを貼り穿刺部位を覆い、27G翼状針でリザーバ穿刺して脳脊髄液(2mL)を採取する。
  5. 脳脊髄液を採取後、注射器を付け替えて約1分かけてゆっくりとヒュンタラーゼ(2mL)を注入する。
  6. 抜針し、穿刺部位を軽く滅菌ガーゼで圧迫して出血等のトラブルがないことを確認する。
  7. トラブルがないことを確認後、ハイポアルコールで付着したポビドンヨードをふき取った後に、保護シールを貼る。

投与時のポイント

  • 動画を見せるなどして落ち着かせることで、スムーズに手技を行うことができる。
  • 母親に付き添ってもらう(手を握るなど)ことで、スムーズに手技を行うことができる。
  • 本人にプレパレーション(子どもの発達に合わせた説明)を何度か行うことで、スムーズに手技を行うことができる。

脳室内投与後の管理

第Ⅰ/Ⅱ相臨床試験において認められたヒュンタラーゼ投与による副作用は、6例中6例(100.0%)に13件認められた。内訳は、嘔吐6例(100.0%)、発熱3例(50.0%)、処置による悪心2例(33.3%)、蕁麻疹、血中ビリルビン増加が各1例(16.7%)であった。そのため、投与後は発熱及び消化器症状に十分に注意する必要がある。

発熱

帰宅後、夕方に38℃程度の発熱が見られることがある。多くの場合、本人が元気であれば翌日には熱が下がることから、経過を見ていただき、発熱が続いているか他の症状が見られた場合には連絡するように伝えておく必要がある。

消化器症状

嘔吐は家族が最も心配される症状である。投与直後に発現することはなく、「帰宅してから1~2回嘔吐した」、「夕食が摂れなかった」というケースがほとんどであるが、多くの場合、翌日には回復して普通に通学(園)でき、食事も摂れている。したがって、当日はあらかじめ「食事を少なめにして、水分を十分に摂取する」ように指導することも必要である。

日常生活での注意

学校での運動制限については、サッカーや相撲、ラグビーといった頭部へのコンタクトがあるスポーツは控える必要があるが、水泳や器械体操などについては問題ない。また、投与当日の入浴や洗髪も可能で、日常生活には特に制限はない。

図1 国⽴成育医療研究センター ⼩児内科系専⾨診療部 遺伝診療科 蘇 哲⺠ 先⽣ ご提供


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